資本主義の帰結 2015 12 13

書名 大格差社会アメリカの資本主義
著者 吉松 崇  日経プレミアシリーズ

 この本では、経済的な格差が、
どのような所得で発生するのかを検証しています。
 アメリカにおける所得格差の最大の要因は、
資本所得の格差拡大ではなく、
労働所得の格差拡大である。
(中略)
 現代アメリカの格差拡大の最も大きな要因は、
資本所得の格差というよりも、
労働所得の格差拡大である。
 そして、その労働所得格差拡大の「真の原因」は、
上位1%の人々の労働所得の上昇、
すなわち「スーパー経営者の登場」であるということになる。
(中略)
 2008年の金融危機で破綻したリーマン・ブラザーズに14年間CEOとして君臨した、
ディック・ファルドは、リーマン破綻の元凶だと言われる。
 そのファルドが14年間でリーマン・ブラザーズから得た報酬は、
「現金報酬」と「株式報酬を現金化したもの」を合わせて、
624億円になる(1ドル120円で換算)。
(引用、以上)
 とてつもない労働報酬ですね。
このような事態については、
「資本家が労働者から搾取している」と主張したマルクスが、
全く想定していなかった事態でしょう。
 さて、21世紀に入ってから、
資本主義も別の形態になりつつあります。
 21世紀においては、
「知識資本主義」になりつつあるのです。
 かつての資本主義の「資本」とは、
土地や資産、機械、労働力だったでしょう。
 しかし、今の資本主義とは、
「知識」が「資本」となりつつあります。
 アメリカのシリコンバレーで登場する「IT企業」は、
「知識資本主義」の先駆と言えるでしょう。

資本と労働 2015 12 12

 日本においては、
給与収入(労働収入)だけでは、
金持ちになることはできません。
 日本では、一般社員と社長の収入の格差は、
それほど大きくないからです。
 日本において、金持ちになるには、
資産(賃貸用不動産)か投資が必要となります。
 たとえば、この3年間で、
給与収入は、微増という程度でしょう。
 一方、日経平均株価は、
3年前は、10,000円弱の水準でしたが、
現在は、20,000円に近い水準です(2015年12月11日)。
 つまり、日経平均株価連動型の投資信託を保有していれば、
単純計算で、資産が2倍になったことになります。
 ほとんど増えない給与収入から節約して貯金をしたところで、
金利はゼロに近いので、貯金は、あまり増えなかったでしょう。
 その上、円安の影響で、
食糧などの原材料価格(輸入品)が高くなり、
家計には影響が大きかったと言えます。
 もちろん、家計が日経平均の投資信託を保有していれば、
給料が上がらなくても、食料品の値上げがあっても、
全く問題がありません。
 問題は、投資信託を保有している家計は、それほど多くないし、
ましてや賃貸用の不動産を保有している家計は少ないでしょう。
 仮に、日経平均株価連動型の投資信託を保有していても、
株価というものは、値動きが激しいので、
普通の人は、一喜一憂してしまい、平穏な日々が送れなくなるでしょう。
 さて、アメリカでは、
給与収入(役員報酬)で金持ちになることができます。
 リーマン・ショックが起こる前は、
ウォール街は、史上空前の好景気で、
市場では、「ボーナスを1億ドルほしい」という声が聞こえるくらいでした。
1億円ではありません。
1億ドルです。
 リーマン・ショックの後、
さすがに、このような驚異的なボーナスは姿を消しましたが、
アメリカにおいては、労働収入の格差が大きなものになっています。
 こうしてみると、日米で経済的な格差を生み出す要因は、
大きく異なると言えるでしょう。
 ちなみに、アメリカでは、相続税、
いや遺産税と言いますが、この税率は、かなり高いものとなります。
 今は、昔ほど税率が高くないと思いますが、
アメリカでは、一代で財産を築いて、一代で消えていくということは、よくありました。
 つまり、アメリカでは、「資本(資産)」によって、
経済的な格差が固定化されることはないと考えられます。
 もちろん、金持ちが、財団を設立して、
その財団へ資産を寄付することにより資産を後世へ残すという手法があります。
 さて、このように各国によって、
経済情勢は大きく異なるので、
世界共通の経済学は、難しいでしょう。







































































































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